日本の戯曲研修セミナー in 福岡 vol.3 報告

日本の戯曲研修セミナー in 福岡 vol.3
別役実を読む!
〜不条理をこえる不条理劇の世界〜

開催日時:2020年 7 月 21 日(火) 〜 11 月 29 日(日)
実行委員:石田聖也、上野隆樹、桑森ケイ、五味伸之、田村さえ、山田恵理香、山下キスコ、髙橋知美、日下部信

【A 演出プラン講座 /リーディング上演 】
講師:山田恵理香
「ジョバンニの父への旅」演出:田村さえ
「青い馬」演出:五味伸之

【A 上演前レクチャー「不条理をこえる不条理劇の世界」】
講師:西堂行人
【シンポジウム「残る戯曲の条件-別役実の魅力-」】
出演者:西堂行人、五味伸之、田村さえ 司会:石田聖也

【B 見えない演劇「マッチ売りの少女」】
講師:小松杏里

【B リーディング上演「堕天使」】
講師:下松勝人

【C トーク「残る戯曲の条件–演出家にできること–」】
出演者:小松杏里、下松勝人

 新型コロナウイルスの影響でオンライン開催の可能性も考えつつ、福岡では対面での開催にこだわりました。三月に亡くなった劇作家・別役実さんとその戯曲の研修を「不条理をこえる不条理劇の世界」と題し、不条理という言葉をより強く意識することとなった2020 年という世界の中で、改めて不条理劇を学び、戯曲を上演する意義や不条理をポジティブに捉える別役実さんの考え方に触れ、現在私たちの置かれている状況を捉えなおす時間を過ごしました。
 今回の開催では、前期・後期と二つに分けた企画立てを行いました。前期では演出者にとっての戯曲研修のあり方を考え、【演出プラン講座】という形をとることにしました。この講座では開催地域で活動する五味伸之、田村さえの2名を代表研修者とし、自身にとって演出プランとは何か?を言語化し、その後、各演出者が選んだ別役戯曲から演出プランを立てる「プラン期」、プラン期を経て実際に俳優をキャスティングし、リーディング上演として立ち上げ・発表する「創作期」という流れで展開していきました。その過程の中、自身の立てた演出プランに対して講師の山田恵理香さんからのフィードバックを受け、ディスカッションを行うことで普段の創作では持てなかった視点や、新たな戯曲との向き合い方を見つけていきました。
 代表研修者の五味伸之さんは今回が初めての戯曲からの演劇作品の立ち上げを経験し、田村さえさんが、初めての既成戯曲からのプランニングと立ち上げに取り組むことができたのも大きな成果だと感じています。また、上演前レクチャーの講師として演劇評論家の西堂行人さんをお招きし、リーディング上演前に観客と別役実さんと不条理劇をとりまく演劇思想史に触れたり、上演後にシンポジウムを行うことで、より観劇体験が研修として深まりました。
 後期では、戯曲から視覚に頼らない演劇体験を作り出すWS【見えない演劇『マッチ売りの少女』】、参加者が劇空間に身を置くことで正解のない劇世界を感じ共有するWS【リーディング上演『堕天使』】の実施を行いました。トークでは講師の小松杏里さん、下松勝人さんにご登壇いただき、現在の社会
における戯曲の「わからなさ」が支える機能と役割についてお話しいただき、地域が抱える今後の課
題にまで話しが及びました。

報告者 石田聖也
(日本の戯曲研修セミナーin福岡 実行委員)


▣ 日本の戯曲研修セミナー in 福岡 vol.3
  別役実を読む!〜不条理をこえる不条理劇の世界〜


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