出版

協会誌「D」 書籍

関西戦後新劇史
1945年~1969年

日本演出者協会関西ブロック/晩成書房新社/2018年発行/定価3,000円+税

大海の中を笹舟に乗ったような状態を乗り越えて新劇の職業化に向けて闘い続けてきた関西の新劇は、終戦から 一九六〇年代末までにどのような姿を見せたのか―

関西新劇の歴史から学ぶ面白さ

関西の戦後新劇についての記録はまったくなかった。戦前の関西新劇の記録と八〇年代から三〇年間の小劇場演劇の記録を書いた人はいた。何故か、その間の、つまり戦後(第二次大戦後)から七〇年代末までの記録が、空白的、狭間のようにあった。誰も手をつけなかったのである。その記録(お越し)を日本演出者協会が行なったのである。戦後の新たな出発に驚かされる。東京とは違い、プロの演劇人ではなく、アマチュアの学生演劇人たちの活躍によって、戦後を出発したのであった。学生たちの成長に驚かされる(その学生のなかには、手塚治虫や小松左京もいた)。多くの困難と多難な局面がありながら、アマチュア的存在を脱して、職業劇団を作る発想に到達する。発想のみではなく、プロ劇団実現に至る具体的現実的な労苦を乗り越えて、である。だが、そこには、大海のなかを笹舟に乗った状態があった。が、戦後も現代も強く生き続けている。歴史を描くことは、そこに蠢いた実像が躍動を持って感じられることである。歴史を学ぶことは、新たな発見があって、面白い。

<文責:菊川徳之助>

目次

■ 第一部 関西新劇を視野に、戦後の十年程
         ・・・1945〔昭和20〕~1956〔昭和32〕

第 一章 :戦後出発はアマチュア学生演劇人から
第 二章 :関西戦後新劇の出発
第 三章 :大阪の劇団の活動
第 四章 :京都、兵庫の劇団の活動
第 五章 :和歌山、奈良と滋賀の劇団の活動
第 六章 :大阪労演の創設と地元劇団、自立劇団との関係
第 七章 :専門職業劇団・関西芸術座の設立
第 八章 :関西芸術座創立のころの状況

■ 第二部 職業専門劇団を目指したクロニクル
         ・・・1958〔昭和33〕~1969〔昭和44〕

第 九章 :一九五八・五九年の劇団活動
第 十章 :一九六〇年安保闘争と関西新劇
第十一章 :一九六一年から一九六五年までの劇団活動
第十二章 :合同公演は、何を生んだか
第十三章 :京都労演と土(金)曜劇場、大阪の月曜劇場、と神戸労演
第十四章 :一九六六年から一九六九年までの劇団活動
第十五章 :新劇ブームはあったか、俳優の生活は、劇団の経済は?
第十六章 :職場演劇から地域演劇へ移行する自立演劇
第十七章 :全国公演、地方公演、学校公演
第十八章 :劇場、観客の変容 会員減少の労演 大阪万国博覧会
第十九章 :一九七〇年代以降、これからの関西新劇界は?

<附属資料>

(1) 一九七〇年から一九七三年の劇団活動
(2) 関西新劇劇作家の戦後の主な作品(一九四五~一九七三年)
(3) 道井直次「戦後関西新劇私史1~10」(「道」より転載・抜粋)
(4) 参照文献リスト
(5) 別表①=使用した劇場(一九四五~一九七三年)
(6) 別表②=劇団年表

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