フェニックス・プロジェクト2021~ 10年/今、この地に生きる ~【第3期】報告

【第3期/12月】

 8月、11月、12月と、3期に渡り開催した『フェニックス・プロジェクト2021〜10年/今、この地に生きる〜』は、多くのみなさんの支えをいただいて無事幕を閉じることが出来ました。多忙な中でも最後の報告・修正までサポートしてくださった上田さん、事務局のみなさんをはじめ、応援にかけつけてくださった理事のみなさん、実行委員として企画段階から携ってくださった協会員のみなさんにこの場をお借りして改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。

 第3期はサブタイトルを『 10年〜東北演劇の今、未来〜 』とし、東北六県から若手演劇人をキャスティングしました。青森から藤島和弘、秋田から髙瀬奈穂子、岩手から村田青葉、宮城からくまがいみさき、山形から石川直幸、福島から清野和也。24〜34歳の6人に依頼した内容は、「震災から10年の間に生まれたもの、変わったもの、変わらないものを言葉にしてほしい」というシンプルなものでした。その結果、6人それぞれの個性が溢れた、多様な作品群が生まれ、リーディング公演としてもバラエティに富んだ面白いものになったかと思います。
 6人の演劇人、公演に携わった仙台の実行委員にとって、読み手として参加した仙台の俳優陣、ゲストとして参加していただいた大信ペリカンさん、小林七緒さん、流山児祥さん、わかぎゑふさんと出会い、交流できたことも大きな財産になったのではないでしょうか。このご時世、出会えることが非常に価値のあること=難しいことになっていますが、「人を描く演劇」を創る以上、もっともっと出会っていかなければいけないと個人的には強く実感しました。六県の世代を代表する才能とバイタリティを持つ彼ら/彼女らと出会えたことが、東北ブロックを立ち上げようとしている私たちにとって、今後本当に大きな意味を持つと思っています。

 公演の話に戻すと、すべての上演にアフタートークがついており、作品や東北で演劇を作っていくことについて、お客さんの前で言葉に出来たこともこの企画の特筆すべき点ではないでしょうか。作家は自分の言葉で、初めてのお客さん・俳優に説明するという機会を得られ、お客さん・俳優は他県の若手演劇人がどのようなマインドで作品を創っているのかを知ることができる。「作品を通じたコミュニケーション」こそ演劇の醍醐味であり、アフタートークはそのコミュニケーションをより円滑にしてくれたように思います。そして、やはりこのようなコミュニケーションは生/LIVEでなければ実現できなかったかもしれません。同じ空気を吸い、共有することで、豊かなやり取りが生まれるし、そのやり取りこそが「演劇らしさ」ではないかと思える企画でした。

 また、作品上演とは別に開催された「東北若手演劇人座談会」と「地方演劇トークセッション」も非常に有意義な企画になりました。「座談会」では東北で活動を継続していくことの難しさや今後どのように取り組むかなどを話し合い、「トークセッション」では流山児さんから台湾の事例、東京の現在を、わかぎさんから大阪の事例を伺うことができ、それぞれが足元から見直して未来に向かって考える良い時間だったと思います。観客席からの「なぜ、六県で集うのか?」という質問に対して、その必要性を自分たちで改めて自問自答/問い直したのも良い経験でした。東北という広い地域で孤立してしまいがちな演劇人が、その熱と知識、経験を共有できる場づくりを今後も取り組んで行きたいと東北在住の協会員の一人として強く思っています。

 演劇の地方化が進んでいる中、その環境整備は追いついていないのが現状です。しかしながら、それらもイチからつくれる/携われる喜びだというマインドで、今回の事業で出会った6人とそこから広がる各県の演劇人、フェニックス・プロジェクト2021を支えた実行委員が手を取り合い、蔵王のお釜の飯をみんなで食う。そんな東北ブロックになればと末筆に願いを込めて。

報告者 大河原準介

 


フェニックス・プロジェクト2021【 第3期 】
― 10年/今、この地に生きる―
東北演劇 の 今 、未 来

 フェニックス・プロジェクトは、2011年3月11日の東日本大震災によって被災地のイベントがほぼ中止となり、被災地の舞台芸術家が劇場が使えなくなり公演を行うことができない、また日常の仕事を失う等、過酷な状況下にある事を目の当たりにした協会員の呼びかけによって私ども日本演出者協会が立ち上げた事業です。
 2021年の今年は東日本大震災より10年を迎え、昨年からのコロナ禍による被災も重ねての鎮魂の思いを捧げる場として、また今も残る復興の課題を演劇を通して共に考える場として、さらに新たな表現を探る場として「フェニックス・プロジェクト2021」を企画しました。会場としては宮城県仙台市を選びました。
 全体のコンセプトは、地域と社会とつながる。「いま、地域の抱えている個々の課題を、一緒に考える切っ掛けとしての出来事とする。演劇がどのように深く社会とつながれるか?芸術に何ができるのか?」
 それらを追求したいと考えています。


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