特別鼎談:
長塚圭史×落合陽一×シライケイタ
「社会と芸術」

インタビュー

コロナで問われる事となった芸術が社会にどのような役割を果たしているのか?まずはこの当たりから皆さんのご意見を伺いたいと思うのですが、いかがでしょうか?

落合 文化審議会議のメンバ-として、文化芸術推進基本計画第二期を策定中に、デジタルが足りない事を伝えました。審議をする立場ではあるのですが、言える事としては「社会と芸術」と言う事について、政府の側はよく見ているという事ですね。
僕は、基本的に作品を作っていますし、大学で教員をしています。よく作品をギャラリー的に販売するという事はしますが、作品をプロダクトに変える興行を殆どしないので、アートビジネスとしてはそんなに大規模ではないと思います。もちろん自分のスタートアップは市販品を販売しています。
さまざまな立ち位置があって、大学では講義も入れれば1000人ぐらいの学生さんを教えていますがゼミは数十人程度。アートをやってるゼミは筑波でなくてデジタルハリウッド大でやっているので数人程度。それでも全体感で見た時に私はアートの文脈も文化活動も好きなので、アート以外に人類がやる事は特に無いんじゃないか?と思っているんですけれど。

シライ どうです?長塚さんはスーパーパブリックですよね?

長塚 まあ、そうですけど・・・。実は、一昨日まで下北沢で盆踊りやってて(笑)

落合 プライベートで?

長塚 プライベートというか、劇団でこじんまりと始めた事が、いつの間にか下北沢と一緒に連携することになって・・・。実は、3年間も下北沢には盆踊りがなかったんですよ。

落合 あ、半パブリックがパブリックになったって事ですよね?すごく面白い。

長塚 面白いですよね。「本多スタジオ」って言う1982年に建てられた建物が下北沢の開発で潰れちゃうっていう事なんですけれど、工事の時期が決まらないからスタジオも行き場所を失っちゃっていて空いてたんですよ。それだったらと一か月ぐらい借りて、そこで劇団員と何かをやって、お客さんと繋がれるぐらいでいいかなと思っていたら、さまざまなアイディアが集まる中、盆踊りやろうって言い出した人がいて。
盆踊りって演劇でどうやってやるんだ?と言ったんだけど、本多劇場グループさんが「じゃあちょっと広場を借りましょうか?」って言って、昭和信用金庫さんの駐車場を借りる事になったんですよ。そしたら行政との調整が始まって。最終的には世田谷区が後援になるような形で商店街が中心になって「秋の下北沢盆踊り大会」となりました。
劇団レベルで始まったことが、終わってみれば地域の方とじゃあ今後はどうするのか?って話になってる。僕が思ったのは、求める人の所に伸びていく物の方が、めちゃくちゃ面白い出来事が起きたっていう実感があるなって。
後、公共劇場としては、観劇人口なんて少ないですし、劇場自体知らない人も多いんだから、劇場が町にある事の良さをどう伝えていくかって思考をしていて、より多くの人が気軽に入って来られるようにしたいんだけど、どうもチケット代が高すぎて観に来られないという矛盾を抱えていて。
落合さんどうですか?演劇ってご覧になられてます?

落合 今は全然見に行かないですけど。
万有引力の公演を友達が好きだったので、昔はたまに見に行ったりしていましたね。あー、こんなものがあるのかって感動しました。大人になってからは能や歌舞伎に呼ばれたりとかはあります。ただ、小劇場に呼ばれる事は少ないので、あまり出入りしないのが現状です。もちろん友達の公演には行くのですけども。

長塚 近年のデジタル化というか、コンピューターの世界がこれだけ進んでいる中で、劇場とか演劇の必要性を、落合さんはどうご覧になっているんですか?

落合 僕も、劇場でのパフォーマンスはするんです。近頃は音楽や映像をリアルタイムで生成したりパフォーマーとして表現して発表するって事は月一ぐらいでしています。ただ、演劇的要素、僕の頭の中はどっちかっていうと映像的に出来ているので、視点だったり決められた尺で何かを切ったり、例えば暗い中からそのビジュアルが上がってきて、音が入って来て観客の視覚、聴覚、身体の感覚的体験として作り込むっていう事についてのイメージはしやすいタイプの人間なんですが、ここで人が出てきてこうやって演じたらこの人たちはどういう気持ちになる?みたいな事には全く頭が働かないので・・・。人と人との交流をデザインしたり演出したりとかして行く所に、僕は演劇の妙があると思っていて、演劇にしか出来ない事だと思っています。私はそういった人と人の間にデジタルを介在させること自体は大学研究では頻繁にやるものの、あまり劇場ではやっていないのが現状です。

シライ 演劇ってそもそもお客さんの数が凄く少ないんだけど、社会の役割に沿って言うとお客さんって多い方がいいと思うんです。どのように客を獲得していくか?っていう視点は、メディアアートを作る時に凄く考えるんですか?

落合 僕は、小劇場タイプのメディアアーティストだと思って頂ければ良いと思います。メディアアートって、ビジネスとしては遊園地化するかサブカル化するか人畜無害なバーチャルリアリティを目指すかなどのだいたい3択になるんですけど、例えば収益構造を遊園地化するなら、チームラボさんとかは興行収入で動いて、世界各地に展開する事で作品を作りその過程でギャラリーの販売も続けている。
サブカル化の道を通る人はあまりいなくて、でも尖った作品はギャラリーで発表をして、赤字でも作るみたいなものだと思うんです。ただ、産業自体をサステナブルにするには、遊園地化するしか方法はないように見えます。その面ではある程度のお金を払ってくれる地域とか国の仕事だったり、経済の原理と外れた所でしか派手なものは作れないことが多いです。
メディアアートって作品ひとつで原価が5000万ぐらいしたりすることもあるんです。5000万円の物を見に来るのに5000人しか来なかったら、1人あたり1万円じゃないですか?そんなのPay出来るわけがないから、その仕組みや設計をうまく作らないといけない。私は、自分の作品を作るときにお客さんを沢山入れないと成立しないっていうメカニズムにはしてないんです。その辺は協賛をもらったり、自分で作ったり色々なことを組み合わせてやっています。

シライ 演劇も全く一緒ですね。長塚さんはKAATで芸術監督として、どういう風に考えて作るんですか?

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