若手演出家コンクール2023 最優秀賞受賞者インタビュー〈広報部〉 八代将弥 a.k.a.SABO

八代将弥 a.k.a.SABO16号室/room16
『演出家コンクール最優秀賞受賞予定作品』

―― 最優秀賞をもらった感想を教えてください。

八代
ほっとしています。自分が思っていたより感極まったんで。改めて、最優秀賞が欲しかったんだなってことを実感しています。ちょっといつもよりも自分が前面に出るようなお芝居だったので、他の二人の俳優はどうしても僕のために演じるということになってしまいました。そんな中で、分かりやすい形で賞が取れて、さらに審査員の方々が俳優の演技をほめてくれたというのはかなり嬉しく、ほっとしました。

―― 客席にご両親がいらっしゃいましたが、この作品を見てもらい、今どのような気持ちですか。

八代
劇中ではかなり両親に反対されるようなシーンを描きましたけど、実際は常に応援してもらってはいるんです。ただ同時にやはり劇中のような反対をされたこともあったので。なので審査員のお偉方の言葉が少し両親に届くといいなという気持ちはあります。

―― 2018年に優秀賞を受賞していますが、またチャレンジしようと思った動機は?

八代
前回のコンクールで、優秀賞という肩書きがいただけたじゃないですか。そのおかげなのかわからないんですけど名古屋で少し仕事が増えたりとか、ちょっとだけ自分のやりたいことをやらしてくれる環境ができた部分もあるんですよ。でも同時に、何か失ってないかっていうことだったり、自分の表現するときのバランス感覚がこれでいいのかっていうのがずっとくすぶってて、それをもう一度確認したくて応募しました。

―― もう少し具体的に。

八代
劇団外部で客演や作演とかやったりしている中で、2.5次元っていうか、エンタメ系の作品に関わったりすることがあったりして、役者として多少なりともお金が入ったり、応援してくれる人が増えるようになったりしたんですが、それで自分のバランスってどこにあるんだろうっていうことを考えるようになって、「お客さんがこれだけ入ってこれだけ喜んでんだったらもうええやん」っていう感覚もあるんだけど、客席で見て「これ面白いか?」っていうことも思ったりして、自分の立ち位置を決められないという悩みですね。自分が何者なのか知りたいっていう感覚があったかもしれません。

―― 今回の作品『演出家コンクール最優秀賞受賞予定作品』に込めた想いを教えてください。

八代
この身体で表現に向かう、演劇に向かうってことにもう少し確信を持ちたいっていうのがあって、この作品がどういう評価になるかでちょっとそれがわかるかもっていうことですかね。あと最近の自分の傾向としてメタ芝居をやりたいとは漠然と思ってました。先輩たちからはいろいろ言われるんですけどね。「もうちょっと闇の部分があった方がいいんじゃない」みたいな。勝手ですよね。(笑)

―― 今回、創作する上で難しかったこと、チャレンジしたことはありますか?

―― ちなみにもしどれか一つ選ばなきゃいけないとしたら、作家と演出家と俳優だったら、どれなんですか?

八代
今だったら演出に一番興味があるんですけど、多分ワクワクするものだったら正直何でもいいかなと思っていて、実際、定期的に力を入れるものが変わってきています。今はもちろん作演ですけど。(笑)

―― これからコンクールに応募してくる演出家にエールなどあれば教えてください。

八代
コンクールに対して批判的な目線、冷ややかな目線をもってやっている表現者の方っていうのが実際にはいるんですね。僕はそういう人たちの中で純粋に表現者として好きな人がいるので、コンクールが絶対だとは思っていません。ただ、コンクールに応募するなら、僕は審査員の採点にこだわった方がいいという気がしています。点数にこだわることで、自分自身に発見があるのではないかと思います。今回、こういう作品が生まれたのはコンクールがあり、点にこだわっていたからだと思います。たぶんコンクールじゃないところでこの作品をやろうとしたらもう少しまとまった作品になっていたように思います。点数にこだわることで自分の表現の幅が広がった実感があります。

―― 最後に。今後の展望を教えてください。

八代
一番の答えは東京の現場に出たいってことです。そういうことになっていかないと出た意味がないかなって。それは俳優としてでも演出家としてでも。 次はちょっと重複するんですけど、自分がどういう身体で表現に向き合ったらいいかについて確信が持てるようになりたいってことですね。

 聞き手 日本演出者協会 広報部 中村ノブアキ・野月敦

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