若手演出家コンクール2023 優秀賞受賞者インタビュー〈広報部〉中山美里

中山美里(演劇企画もじゃもじゃ)『 不眠症と河 』

―― まずは本番を終えての感想を教えてください。

中山
私はいつも稽古場で笑ってたんですけど、今日のお客さんはそんなに笑ってなかったんで自分の感覚がズレてるのかなっていうのをちょっと心配になったのと、仕込み、本番までの流れが思ったよりもスムーズだったのでよかったなと。

―― 若手演出家コンクールに応募した動機は?

中山
若手ってついてるから応募しやすかったんですよね。単純に。あとやっぱりコンクールで何か賞を取るってことが自称演出家じゃなくなるのかな、自他ともに認められて仕事にできるのかな、ちゃんと演出家って名乗っていいのかなって思って応募しました。

―― 僕はどちらかと言えば、作家気質なのかなって思ったんですが。

中山
確かに私は作家気質だと思います。漫画書いてますし、1人のクリエイト作業が好きなので書くの好きですし。ただ自分が書いたものを誰かに演出してもらったことがまだなくて、だから自分で演出やるしかないってところもあるんですけど。
でも演出作業も好きです。(笑)
集団創作の中で稽古場で自分が思っていたものとは全然違うものを役者さんが持ってきてくれたりとかすると、それはすごい楽しいし、今回も結構みんな勝手にプランニングしてくれて私がそれを交通整理したという感じでした。そういう楽しさがあるから演出がやめられないって感じです。

―― 今回の作品『不眠症と河』に込めた想いを教えてください。

中山
私、自分から出したもので書くと結構狭い世界になっちゃうときがあるので、ここ最近やってるのが、誰かが「こういう芝居どうかな?」みたいなことを台本にすることにはまっていて、1次と2次に出演してくれた大学の同期の石津くんが「銀河鉄道の夜」について話してくれて、それがすごい面白かったんです。それで「銀河鉄道の夜」を読み返したときにすごい哲学というか世界のベースが書かれてるって思ったんですよね。なので、そこに引っ掛かって、それプラスその石津くんから「夜、寝れないっていうのはすごい孤独だ。みんなが寝てる中でひとりだけ起きてるってことだから」って言われて、私眠れなかったこと全然ないんで面白いなって思って、それで「銀河鉄道の夜」と「不眠症」を題材に掛け合わせてみたら面白いんじゃないかと思って書きました。
さらに加えるならマルクス・ガブリエルってドイツの哲学者の本を何冊か読んでいて、それも面白いって思っていて、その要素も入れました。

―― なるほど。確かに作風的にものすごく哲学的な印象を受けて、だから笑っちゃいけないという空気があったんですよね。

中山
そっかそっかそういうことか。確かに真面目な話ですよね。私、真面目なことを笑ってしまうんですよね。怒られるんですけど。(笑)

―― 今回、創作する上で難しかったこと、チャレンジしたことはありますか?

中山
チャレンジしたことは、役を固定にしない、誰かの役を1人の人が別の役をやったりとかですかね。あと1次審査と2次審査ではモノローグを多用してたんですけど、今回、銀河鉄道を扱う上でそれが合わないからやめたっていうのもチャレンジではありました。 難しかったことは単純にタイムスケジュールですね。やったことないケースだったので。2時間で仕込みを終えなきゃいけないっていうことから逆算して、作品づくりをしました。例えば舞台美術をシンプルにしたり、照明のきっかけを減らしたりとかです。

―― 最後に。今後の展望を教えてください。

中山
ユニット的には拠点的なものを持てたらいいなと思ってまして、別に所属してなくても、役者なり表現したい人たちが表現を諦めなくてもいいようなシステムみたいなものを組みたいと思ってるのと、私個人的には、いろんな演劇賞を総なめにしてやろうと思っています。

聞き手 日本演出者協会 広報部 中村ノブアキ

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