若手演出家コンクール2022 優秀賞受賞者インタビュー〈広報部〉 春陽漁介

春陽漁介(劇団5454)『宿りして』

―― 本番を終えた今の率直なお気持ちを教えてください

春陽
すごく楽しかったです。しっかりと近い距離で、お客様と一緒に作品を作れたっていうのはすごく楽しかったですし、あんなに笑ってもらえるんだと思ってびっくりしました。

―― 普段はコメディ主体なんですか

春陽
コメディとは言ってないんですけど、登場人物たちの面白さというか会話の面白さみたいなのは狙っていて、だからその延長でお客様に笑ってもらうことは意識して作っています。

―― 今回の応募動機を教えてください

春陽
今までどちらかというと、自分は劇作家だと思っていました。最近になって演出の楽しさを強く感じ始めたこともありまして、劇団員の手も借りて応募することにしました。

―― 最終審査に臨むにあたって考えたことは?

春陽
実は2次審査の劇評が結構辛口だったんです。何で通ったんだろうって思うほどに。笑
それで審査員の方が、何を演劇に求めていて、若手に何を求めていて、演劇界をどうしようとしているのか知りたいと思いました。

―― 本作品『宿りして』で伝えたかったことは?

春陽
自問自答にはなってしまうんですけど、自分たちが何を作れるのかとか、自分たちが作ってる演劇に対して自分たちはどう思ってるのかとか、そこから出発しました。それで「認識」というものをテーマにしてみたいと思うようになりまして、であれば「認識」の境目だったり、現実と虚構が故意に混ざるみたいなものが面白いんじゃないかと思いました。それで紀貫之の「現実で見た素敵な桜が夢の中に出てきて、夢と現実が渾然一体になった」という和歌をモチーフにするのはどうかと思って、『宿りして』というタイトルにしました。

―― 観ながら「この先、どうなるんだろう」ってワクワクしました

春陽
ありがとうございます。僕はお客様を驚かせられるような物語を作りたいわけじゃなく、物語を観たときに現実世界で起こることとか、今まで経験してきたこととかを振り返って何か発見してもらえたらいいなと思って創作してるので、そう思ってもらえたら嬉しいです。

―― 創作にあたって難しかったこと、悩んだことはありますか?

春陽
物語を1時間以内にしなきゃいけない都合があるときに、都合よく進めてしまうと破綻するし、かといって都合悪すぎても破綻するし、そのバランスに悩みました。登場人物全員にとって都合よくて、全員にとって都合悪い場所を探しました。

―― 最後に、今後の展望をお聞かせください

春陽
僕は商業とかエンタメが好きなので2.5次元を作りたいなって思ってるんです。お客様にどうすれば楽しんでもらえるかってことと向き合い続ける演出家になりたいって思ってます。だから劇場もエンタメとしても見やすい劇場にこだわっています。

聞き手 日本演出者協会 広報部 中村ノブアキ

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