フェニックス・プロジェクト2021~ 10年/今、この地に生きる ~【第2期】報告

【第2期/11月】

 フェニックス・プロジェクト2021第2期 福島特集は、2021年11月5日(金)〜7日(日)の日程で、「福島県産演劇×トーキョー産演劇×写真×クロストーク フクシマを通して見る今と未来」とし、せんだいメディアテークにて開催しました。

▶▶ 視覚からの入り口

 来場した観客は、まず写真と映像に出会います。そこには原発事故によって非日常が日常となった世界があり、そこに生きた人々の思いを写真というメディアを通し感じていただきながら劇場へと進んでいただきました。写真展は3.11後の福島を撮り続ける中筋純の写真集「コンセントの向かう側」をもとに構成されたものです。
 浪江町の街並みを写した全長7.5メートルの作品『ストリートビュー』展示は圧巻です。

▶▶ 10年という歳月

 そして次に出会っていただくのは福島県産演劇と出来立ての東京産演劇、それらはどれも震災と原発事故によって翻弄された人々を描いた作品群です。
 まずは震災直後から始まった劇団ユニット・ラビッツと流山児★事務所との共同制作によって創られてきた福島県産作品群のダイジェスト映像を背景に流山児祥、佐藤茂紀、吉田千亜のトークを行いました。場面場面で、作品が産まれた経緯、意義があるとすればその意義、今後の展望、また流山児さんが福島に関わる思いや感じてきたことを、吉田さんが人の気持ちに寄り添えるのは演劇の可能性だと感じられたことなどを話されました。

*クロストーク1
テーマ 福島で演劇を創る。

舞台映像
『あれからのラッキー★アイランド』『幻影城の女たち』『オキュパイドフクシマ』など
進 行:佐藤茂紀(劇団ユニット・ラビッツ)
ゲスト:吉田千亜(ルポライター)/流山児祥(演出家)

▶▶ そして今

 今回の上演作品としてあえて参加していただいたのは風煉ダンス『まつろわぬ民2021』です。最近作で原発問題に触れながらそこに暮らす人々にフォーカスを当てた作品で、福島県での上演でも当事者性を越えて多くの共感の輪を拡げた東京産演劇作品です。
 事件、事象を描こうとしたのではなく、人々や土地に取材し、思いを描こうとした作品で、今回のプロジェクトに見事に合致したと確信しています。また今回の上演にあたり、福島県の役者2名を新たにキャスティングして臨み、より力強い作品を観ていただけました。
 ラストの白崎映美ソロライブには観客はすっかり魅了されました。

*風煉ダンス朗読劇『まつろわぬ民 2021 更地のうた』
作・演出:林周一 
出演:白崎映美 反町鬼郎 瑠華(ユニット・ラビッツ) 牧田純一(しらかわ演劇塾)

白崎映美ソロライブ 
歌:白崎映美 演奏:ファンテイル(ギター)

▶▶ そしてこれから

 そしてその後、演劇人だけではなく、中筋純(写真家)、吉田千亜(ルポライター)、あまのかずひこ(福島大学特任教授)など様々な分野の方々と観客とでクロストークを開催しました。様々なメディアを通して福島を表現し続ける思いや、当事者性の問題や、世界の問題とたちに渡るディスカッションが展開されました。観客席からも意見が多く出され、クロストークとして世一ものとなったと思います。ただやはりテーマをしっかりと絞るべきでした。なぜなら一晩でも二晩でも話し続けそうな勢いだったからです。やはりまだまだ語り尽くせぬ思いも問題もそこにあるからなのです。「伝えるべきは事件ではなく思いである。それぞれのできることを為していこうではないか、また次回!」という雰囲気でトーク終了となりました。

 *テーマ「福島」を通して現在と未来について語り合う。

◆司会・進行◆
佐藤茂紀(作家・演出家・高校教師)劇団ユニット・ラビッツ

◆登壇者◆
流山児祥(演出家)流山児★事務所
鵜山仁(演出家)文学座(7日のみ登壇)
吉田千亜(ルポライター)
あまのかずひこ(福島大学特任教授)
中筋純(写真家)
林周一(作家・演出家)風煉ダンス

報告者 佐藤茂紀

 


フェニックス・プロジェクト2021【 第2期 】ー福島特集 ー
福島産演劇×トーキョー産演劇×写真×クロストーク
《フクシマを通して見る今と未来》

 フェニックス・プロジェクトは、2011年3月11日の東日本大震災によって被災地のイベントがほぼ中止となり、被災地の舞台芸術家が劇場が使えなくなり公演を行うことができない、また日常の仕事を失う等、過酷な状況下にある事を目の当たりにした協会員の呼びかけによって私ども日本演出者協会が立ち上げた事業です。
 2021年の今年は東日本大震災より10年を迎え、昨年からのコロナ禍による被災も重ねての鎮魂の思いを捧げる場として、また今も残る復興の課題を演劇を通して共に考える場として、さらに新たな表現を探る場として「フェニックス・プロジェクト2021」を企画しました。会場としては宮城県仙台市を選びました。
 全体のコンセプトは、地域と社会とつながる。「いま、地域の抱えている個々の課題を、一緒に考える切っ掛けとしての出来事とする。演劇がどのように深く社会とつながれるか?芸術に何ができるのか?」
 それらを追求したいと考えています。


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